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2003年11月20日 木曜日

草取りおばあちゃん

子どもの頃住んでいた集合住宅の近所に、
いつも草取りをしているおばあちゃんが住んでいました。
その集合住宅の敷地内には広い公園があったので、子どもの遊び場になっていました。
わたしも、その公園でよく遊んでいました。
そのおばあちゃんは公園のすみっこでよく草取りをしていたので、
"草取りおばあちゃん"と呼ばれて親しまれていました。

わたしは、草取りおばあちゃんの家に時々あずけられる事がありました。
保育園から帰ったあとの数時間、おばあちゃんの家の中で遊んでいるのです。
おばあちゃんと、あやとりをしたり、折り紙をしたり、歌をうたったり、
時にはおばあちゃんの肩たたきをしたこともありました。

ある日のこと、おばあちゃんが「草取りをしに行こう」と言いました。
草取りはおじいちゃんの家に行った時にいつも手伝っていたので、
わたしは張り切って草取りをしました。
この時おばあちゃんに「なんでいっつも草取りばっかりしてるの?」と聞いてみたら、
おばあちゃんは笑いながら「趣味じゃ」と答えたのでした。
わたしが熱心に手伝ったので「今度ご褒美をあげよう」と言いました。
数日後、本当にご褒美をもらったわたしは、また草取りをしよう!と思ったのでした。

それから何日かして、わたしは弟や友達を誘って草取りをしました。
お菓子やお人形がもらえるよ!とそそのかしたのです。
つまり、ご褒美が目当てでした。
公園にはあまり草が生えていなかったので、
雑草がたくさんある山の方にまで、草を取りに行きました。
山盛りになった草は全て、草取りおばあちゃんの家の玄関の前にまとめて置きました。

その晩のことです。
「草取りおばあちゃんの家の玄関のところに草が山盛りに置いてあったんだって」
と、ママが言いました。
「まさか、おまえじゃないだろうね?」と…
そのママの顔色を見て、あれ?やばい!!!と思ったのですが、
弟が「僕らと、○○ちゃん達と一緒に草取りしたの。お菓子がもらえるんだって」
と、無邪気に答えてしまいました。
もちろんわたしは、ママにひどく叱られてしまいました(汗)
草取りおばあちゃんには「ご褒美が目当てでした」とあやまりに行ったのですが、
気分はずっと晴れませんでした。

なのに数日後、わたしはまたご褒美をもらってしまいました。
弟も、近所の友達も、みんなみんな草取りおばあちゃんからご褒美をもらっていました。
おばあちゃんは「みんないい子だから」と言ったけど、わたしは複雑な気持でした。
ご褒美をもらうために草取りをしてみせたことに対して罪悪感を感じていたのです。

それからというもの、草取りおばあちゃんが草取りをしているのを見かけるたびに、
わたしは一緒に草取りをせずにはいられなくなりました。
「おばあちゃんと草取りがしたいから」と何回も言いました。
わたしが罪悪感を感じていたのを、おばあちゃんは知っていたと思います。

わたしが歳をとったら……毎日草取りをするとは思えないけど、
子どもとコミュニケーションのできるおばあちゃんになりたいなぁと、
子どもながらに考えた記憶があります。
草取りおばあちゃんのことは、たぶんこれからも忘れないと思います。

投稿者:はるしゃ | 22:38 | カテゴリー:思い出

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